「違う人みたい」

ZOO 1 (集英社文庫)

ZOO 1 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)

僕が中学生の頃、はじめて読んだ乙一の作品。一言で言えば「衝撃」でしたね。それまで現代作家の小説というものを全く読んでこなかった僕なので、ここから「すげぇ!!小説おもしろい!!いろんな小説読もう!!!」と単純にも決意してしまったわけです。結果、今の自分は人より少し本を読んでる程度の読書家でしかないのですが。それでも中学時代にこの作品と出会えたことは幸運だったと言えます。僕の周りも山田悠介より先に乙一と出会っておくべきだったんだ。たぶん。

乙一の作品にはグロテスクな描写多めな、いわゆる黒乙一と切ない話で締める、いわゆる白乙一があるんですが、この作品には白黒混濁のバラエティに富んだ短編が詰まっているのですごく読みやすいのではないかと。まだ乙一作品を読んでいない方なんか是非是非。十分に衝撃的です。

僕が好きだったというか、一番衝撃を受けた短編は何と言っても「SEVEN ROOMS」です。アイデアや構成の上手さ、トラウマになりそうなくらいにグロテスクな描写、そして最後の一文の鮮やかさ。どれを取っても素晴らしいと思います。(ただし読む人を選ぶのかなぁ、なんてamazonのカスタマーレビューを見ていると思ったりもしますが)

他には、タイトルと共に暖かくて心地のよい「陽だまりの詩」や理不尽な環境のなかでも精一杯に生きる主人公に励まされる「カザリとヨーコ」、意外な結末に想像するだけでも眩暈がする「神の言葉」なんかが好きですね。人によって大きく好みが分かれる短編集だと思います。

そういえば、だいぶ前に乙一の新作が出たみたいで。未だに読めてないんですが、どうなんだろう。文庫化まで待つか。